役目終え 明日の英気 櫓(ひつじ)生え 祐
茜空 極光まぶしく 秋の暮れ 祐
偕老や 妻まるめこみ 秋彼岸 仁
くるゝと 風に舞い散る 紅葉かな こぼり
しとゝと 雨降り続く 秋の空 こぼり
歌声が 吸いこまれゆく 秋の空 はるこ
秋出水 黒に染めなり 思い川 はるこ
この声は きっとちちろと 夢に入る はるこ
子の絵馬の しずかな願ひ 石蕗の花 つむぎ
秋の陽を 受けて鈍きや 福の鈴 つむぎ
紙垂ゆらす 風に秋思の 夫婦杉 つむぎ
愛唱歌 秋の夜に酔う 「庭の千草」 松子
柿供え 好物の旨さ 問えぬ夫(つま)に 松子
運動会 リレーの鼻差 カンフル剤 松子
山茶花や 一重に咲きぬ 秋の空 こぼり
蝉の声 うなだれし肩に そっと触れ 風
人の世は いつか別れが あるものと 思えば悲し 梔子(くちなし)の花 こぼり
幾年も 通ひし杜の 涼風に 今日もふたりで こもごも吹かる 舞