家族みな 歩き始めた 春の道 たかお
幼さも ひと皮むけて 卒業す えいこ
また一つ 老いを重ねる 桜かな 藤岡
さくら貝 初恋という 不燃物 たけし
花菜つむ 手にやわらかし 思川 幸田
約束に 一駅先の 桃の花 柳
大方は 喜寿の人なり 春田打つ 道心
梅咲きて 高校入試の 母祈る ときこ
花びらを 肩にひとひら 手を合わす ときこ
噴水に うたれて鴨の背 虹色に ともこ
鴨の群 人のあと追い 今日も暮れ すぎの
欄干に もたれてわらべ 鴨にえさ 母
ゆらゆらと 風にあいさつ 黄水仙 すぎの
耐えぬきて 柳色めく 土手のすみ としこ
庭椿 ヒヨドリの群れ 追いはらい まつこ
わびすけの もも色拡がる 霜の朝 まつこ
朝の道 かすむ月背に 彼岸入る まつこ
月もとで ささやかれしかと(亡夫) 彼岸かな まつこ
耕人の 後につづく 鴉かな はるこ
春めくや 嫗の庭の 黄水仙 はるこ
ひなまつり 男子(おのこ)ばかりの 母となり はるこ